まんがseek運営日記

まんがseek運営者のメモというか編集後記。

まんがseek」は世界最大のマンガデータベースをみんなでつくることを目的に立ちあげられたプロジェクトです。すでに1万人をこえる漫画家、3万点をこえる作品がデータベースに登録されています。詳しい案内はこちらをご覧ください。→まんがseekについて

漫画賞のデータベースをつくりました

漫画賞のデータベースをつくりました。

たとえばこんな感じです。

これまでも人物データ、作品データそれぞれに受賞歴欄はあったんですけど、専用のデータベースにしました。

なんで漫画賞専用のデータベースをつくるのか

ひとことでいうとメンテナンスが楽になるからです。

たとえば2014年に上記の手塚治虫文化賞を受賞された羽海野チカ先生の「3月のライオン」という作品があります。

この作品は、ほかにも

といった賞を受賞しています。名作ですからねえ。

で、こういった情報を人物データにも、作品データにもそれぞれ入力するようになっていたのですが、まったくもって非効率だし、なにより入力漏れが起きやすいです。
(でもWikipediaってこういう仕組みなんですよ)

受賞歴専用のデータベースを用意することで、1回登録するだけで両方に反映させることができるようになりました。

ほかにもメリットがあります。まさに冒頭のリンクのように漫画賞ごとのページをつくれるようになりましたし、入力の際の誤表記を防げるようになりました。

H☆S賞?

じつは今回、もともと文字情報として入っていた受賞歴を書き出して、それをちまちまとExcelでチェックしていたのですが、かなり表記に揺れがありました。

「文春秋漫画賞」と「文春秋漫画賞」みたいなのはまだいいんですけど、「イキマン」が「月刊IKKI新人賞」となっていたり、「ホップ☆ステップ賞」が「ホップステップ賞」や「ホップ★ステップ賞」になってたり「H☆S賞」なんてのもありました。

これは人間が入力する以上しょうがないんですけど、漫画賞そのもののデータベースをつくってしまえばプルダウンから選んでもらうことで表記の揺れがなくなります。

ほかにも1978年からつづいている「小学館新人コミック大賞」という歴史ある新人漫画賞があるのですが、以前は児童部門は「藤子不二雄賞」、一般部門は「ビッグコミック賞」、ヤング部門は「スピリッツ賞」という名称で開催されてたりして、ややこしいんですよね。
(しかも「スピリッツ賞」という賞はいまは月例新人賞の名称で使われてます)

文字情報で入れていくのが仕組み的には簡単なのですが、それによって生まれる弊害も無視できないなと考えて、今回受賞歴のデータベースをつくることにしました。

漫画賞の歴史

少女マンガ誌は「〜スクール」という月例賞を設けることが多いですけど、『りぼん』の場合、

  • りぼん漫画スクール
  • りぼんNEW漫画スクール
  • りぼん漫画スクール2001
  • りぼん漫画スクール+(プラス)

という変遷で名称が変わっています。ちなみにその前は「りぼん新人漫画賞」でした。ぼくが読んでた頃は「りぼんNEW漫画スクール」だったなあ。

編集長が変わったりするタイミングでけっこう漫画賞(とくに新人賞)ってリニューアルされてるんですね。気にしたこともなかったです。

たしかに『週刊少年ジャンプ』もさきほどの「ホップ☆ステップ賞」以降、「天下一漫画賞」→「十二傑新人漫画賞」→「トレジャー新人漫画賞」と変わってるんです。なのにデータベースには「週刊少年ジャンプ月例賞」としか書いてないのもあって、受賞年を頼りにどの賞かを特定したりしてました。

Wikipediaが頼りにならない

漫画賞の一覧をつくるために、ここ2週間くらいはずっと調べまくってましたが、まあ大変ですね。

とくにWikipediaが頼りにならないのがかなり困りました。最大の理由は「まんがseek」で出版した『漫画家人名事典』の情報が引用されているため、けっきょく同じことしか書いてないケースが多いからなんですけど。

ほかにも今回ぼくがチェックしただけでもまちがってる情報がそこそこあって、もちろん8割方は正しいのでそれで十分なケースもあるんですけど(なのでぼく自身Wikipediaのヘビーユーザーですし)、正確を期さなきゃいけないケースにおいては資料価値を下げざるをえないんですよね。

すごく助けられたのが、むかしから漫画評論を書かれている方々のブログやウェブ日記でした。当時はブログなんて呼んでなくて、たんに「個人ホームページ」と呼んでましたね。
そういう方々が正しい名称を書いてくださっていたり、「○○賞をリニューアルして、△△年にはじまった」と前後関係や創設年をメモしてくださってたり、受賞者が記載されたページの写真をアップしてくださってたりしたので、何割かのデータがうまく分類できました。

ほんとうにありがたいです。

現在は「まんがseek」でも可能なかぎり現物のキャプチャを撮って記録するようにしています。こんな感じで。

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 余談ですけど、そのWikipediaをコピーして書かれてるサイトもたくさんあるので、もしかしたら最初のまちがいを世に出しちゃったのが「まんがseek」かもしれないなあと少し申し訳なく思いました。

ただ、出版社のサイトでもまちがってることがあるので、ほんとうにリアルタイムに現物ベースで記録していかないと、あとからさかのぼって補完するのはほんとうに大変です。
(そのうち時間をつくって国会図書館とかで現物を見ながら補完しなきゃいけないかなあと思ってます)

データのメンテナンスを助けてください

存在を確認できた古今東西の漫画賞を210個登録しました。とはいえまだまだスカスカです。漫画賞の詳細(創設年や終了年など)も抜けてるのが多いですし、受賞者一覧もほとんど入ってません。
(新人賞の場合はその後デビューにいたらなかったケースもあるので抜けちゃうのはしょうがないんですけどね)

これから少しずつ抜けてるデータを登録していきたいので、ぜひ手伝っていただけるとうれしいです!

最後に、なぜぼくらがこんなデータベースをつくっているのかについて少しお話します。それは「ぜったいに探しているマンガが見つかる」データベースをつくりたいからです。

「まんがseek」をつくるきっかけになったのは「さくらももこ先生のデビュー作はどこで読めるのか」という雑談だったことは以前書きましたが、いまぼくらが手がけているこのデータベースは、基本になっている、いつ・誰が・どの雑誌に発表したかという情報と、その作品がどの商品に掲載・収録されているかという情報に加えて、今回の漫画賞のような付随情報も網羅していくことで、定型化・構造化できるすべてのマンガのメタ情報を記録しようとしています。

自分と同い年の漫画家、自分と同じ出身地の漫画家、自分の誕生年に発表された作品、「キン肉マン」と同時期に『週刊少年ジャンプ』に連載していた作品、講談社漫画賞を受賞した作品、などなどデータベースが整備されればマンガを見つけるのが容易になります。

その上で、いろんな人のオススメを集めていけるといいなと思っています。
正確で膨大なデータベースがまずあって、それ単体でも縦横無尽にデータを特定することができるんだけど、さらに個々人の趣味嗜好にあわせてマンガがピックアップされるような世界をつくりたいのです。

マンガの数(作品数)はざっと10万強だと伺ったことがありますが、とても生きてる間にすべてを読むことはできません。
それは諦めるとして、でもちゃんとしたデータベースがあれば死んだあとに「読んどきゃよかった! それ知らなかったわ!」という悲劇は減らせます。

ぼく自身もっともっとマンガを読みたいので、いっしょにこのプロジェクトに参加して世界最大のマンガデータベースをつくりましょう!

ちなみにいまは「ちはやふる」を毎日1冊読んでます。まだ5巻ですけど、めちゃくちゃおもしろいですね。

mangaseek.net