最近の漫画家さんのPixivアカウント所有率の高さ
現在発売中の『エンタミクス』9月号で、“第6回NEXTブレイク漫画RANKING BEST50”が発表されています。
全国3,000店の書店員が「ブレイク必至の有望作&ブレイクしてほしい優良作」を投票により選出しているそうで、こんなランキングになってました。
1位「思い、思われ、ふり、ふられ」(咲坂伊緒)
2位「僕と君の大切な話」(ろびこ)
3位「ファイアパンチ」(藤本タツキ)
4位「はたらく細胞」(清水茜)
5位「腐女子のつづ井さん」(つづ井)
6位「ヲタクに恋は難しい」(ふじた)
7位「虚構推理」(原作:城平京、漫画:片瀬茶柴)
8位「からかい上手の高木さん」(山本崇一朗)
9位「春の呪い」(小西明日翔)
10位「プラチナエンド」(原作:大場つぐみ、漫画:小畑健)
ぼくはこの中だと「ファイアパンチ」と「はたらく細胞」だけ読んでるかな。
どっちもおもしろかったのでほかのも読んでみようと思います。というか「ファイアパンチ」はストーリーがどんどん流転(というか迷走?)していて、今後の展開がまったくわかんないですね。毎週楽しみにしてますけど。
それで「まんがseek」にも当然これらの作品のデータは登録していってるのですが、データを整備しながら気づいたのは、Pixivのアカウントを持ってる方がとても多いってことです。
最近の漫画家さんはほとんどがPixivユーザーですよね。
(それもあって「まんがseek」のデータベースでは、PixivのURLがツイッターと同じように専用の入力欄があります)
デビュー年が入力されていない漫画家のデータも多いので、参考値でしかありませんが、デビュー年が「2010年以降」の漫画家が193人、そのうちPixivのアカウントを持ってる方が60人いらっしゃいました。ざっと31%ですね。
これを多いと見るか少ないと見るかは意見がわかれそうですが、個人的には多いなと感じました。
(ちなみにツイッターアカウントの所有者は116人でさらに高かったです)
たしか前にどこかに書いたような気もしますが、その昔、漫画家になるには持ち込みが一般的でした。そこに漫画家の登竜門として各出版社は「新人賞」を設け(あるいは誌上スクール的な添削システムも生まれたりしました)、新人作家を集めました。
『週刊少年ジャンプ』の黄金期を支えた先生方はほとんど「手塚賞」や「赤塚賞」の出身者です。
そこにコミケが登場し、同人誌の販売で食えちゃうようなすごい方々が現れると、同人作家をスカウトしてプロデビューするというルートが生まれました。
ぼくは参加したことないので自分の目で見たわけじゃありませんが、CLAMP先生なんてほんとうにすごかったらしいですね。
最近ではコミケなどのイベントに出版社がブースを出して持ち込みを受け付けたりしてるようですし、デビューのためのルートとして確立された感があります。
さらにいまはネットですよね。
ブログやSNS、そしてPixivのようなサイトにマンガをアップして、そこから商業誌にデビューするという漫画家も増えてきました。すでに人気がわかっているので、出版社側も売れる見込みを立てやすいというのがあるのだと思います(もちろんこれは「発掘する」という編集者の役割を放棄したと批判されることもありますが)。
ぼくが大好きな「左門くんはサモナー」を描いてる沼駿先生なんて「カマトロ」名義の活動のほうが有名だったりしますしね。
加えて、ここ数年では出版社自ら投稿サイトをつくって募集しています。
持ち込み、新人賞、コミケ(同人誌)、Pixiv(ネット)と漫画家としてデビューするためのルートは時代にあわせて増えてきました。
それぞれに良し悪しはありつつも、こうした選択の幅、デビューに至るまでのルートに自由度が生まれていることはとてもいいことですよね。
そもそも商業誌に載ることが「プロ」なのかという点も含めて、「まんがseek」も色々考えていかなきゃいけないなと思っています。
(いまは同人誌にまで手を広げると膨大すぎるのでやっていませんが、将来的・理想的には世に発表されたすべてのマンガ作品を扱うデータベースに育てていきたいとぼくらは考えています)
ゲスト編集時にDB反映結果をメールでお知らせするようにしました
「まんがseek」ではゲストの方によるデータベースの編集も日々おこなわれていて、少しずつ増えてきています。
(そのうち日毎の数字を出してみようと思います)
ぼくらとしては、とにかく個人の知識を結集することがいちばんの目的で、メンバー登録をするということがそのハードルになるのは本意ではありませんから、登録しなくても編集作業に参加できるゲストの仕組みを用意しています。
ただし無制限に編集できることのリスクはありますので、現状ゲストからの申請に対してはぼくを含む4人のコミッター(承認する役割の人)がチェックをして、オッケーだったら本番データベースに反映するようにしています。
この手順はリスク対策としては妥当だとは思う反面、せっかく自分の知識を提供したのにいつサイトの情報が更新されるかわからないのは不親切だなと感じていました。
そこで、希望者にかぎってはサイトに反映したタイミングでメールを送ってお知らせするようにしました。
すでにサイト上のゲスト用編集フォームには、以下のようなメールアドレスの入力欄が用意されています。
あくまでも希望者のみですので、必須ではありません。
早ければ1時間以内に、遅くとも24時間以内には結果の通知が届くはずです。
また反映されなかった場合も、その理由についてメールでお伝えするようになっていますので、次回以降の参考にしていただければと思っています。
先日のマンガの定義の話に代表されるように、「まんがseek」の運営ルールにはどうしても「ケースバイケース」なものがありますが、それも含めて可能なかぎり開示していこうとしています。
これらのルールは絶対的なものではなく、常により適切なものに変えていきたいとも思っているので、開示してリアクションをいただきながら変えていければと考えています。
あと、そう遠くないうちにメンバー登録ももっと簡単にします。
メンバーになると編集できる項目も増えますし、更新履歴に自分の名前が表示されるので、ぼくとしてはより多くの方にメンバーとして参加してほしいのですが、いまはぼくが手作業でIDを発行しているので時間がかかっています。
10年前のように1000人をこえるメンバーとまたガシガシ編集していきたいですから、その場でさくっと登録して、すぐにメンテ作業に入れるようにします。
これについてはもうちょっとだけ待っててくださいね。
もちろんいまでもメンバーは随時募集していますので、「ちょっと手伝ってみようかな」と思った方はぜひ参加していただけるとうれしいです。
まんがseek vs Wikipedia(みなもと太郎先生の生年月日を調べる)
先日「まんがseek」でも紹介したこのイベント、「風雲児たち」好きとしてはいきたいなあと思ってるんですけど、みなさんどうします?
マンガも歴史も好きなので、みなもと太郎先生の「風雲児たち」は超愛読しています。外伝も同人誌で買ったりするくらい大好きです。
で、参加する前にちゃんとメンテナンスしておこうと思って「まんがseek」のみなもと先生のデータをチェックしました。
そうすると生年月日が「1947年9月14日」になっていました。そうだそうだ、これWikipediaでは「1947年3月2日」になってて、どっちかわからなかったやつでした。
じっさいデータベースのメンテ作業をしていると、Wikipediaがまちがっているケースによく遭遇します。それと「まんがseek」のデータは基本的に(100%ではありませんが)出典を記録しているので、まちがったデータが入る率はそれほど高くないんです。
(Wikipediaもルールとしては出典明記なので同じようなものかなあ)
だからこういう場合もささっとWikipediaの情報に修正するのではなく、いろいろと調べてから修正したりしなかったりします。
まずはネットで検索してオリジナル(一次情報)を探す
まずふつうにGoogleで検索すると、Wikipediaをそのまま引用しているページが多いので、「1947年9月14日」説をとっているサイトがないか調べてみました。
(コピペが多いため、単純にヒットしたページ数で多数決をとれないのも注意すべきポイントですね)
するとAmazonではこっちが表示されました。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
みなもと/太郎
マンガ家。1947年9月14日生まれ。京都府出身。京都市立日吉ケ丘高校美術課程卒。67年、集英社「別冊りぼん夏の号」でデビュー。68年「作画グ ループ」に入会。のちに同会が日本最大級の漫画同人になる立役者となる。70年上京し、講談社「週刊少年マガジン」に『ホモホモ7』を連載開始、本格的作 家生活に突入する。以後、少年誌・少女誌・青年誌で活躍する。マンガ評論家としても著名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
これは「冗談新選組」という傑作の商品ページです。ぼくも持ってますけどほんとおもしろいですよ。
来年の大河「真田丸」の脚本を担当される三谷幸喜さんとの対談もあるので(ちょうど大河の「新選組!」の時期だったかな)二重三重にオススメです。
- 作者: みなもと太郎
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2003/11/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 9回
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Amazonの場合、自社でデータベースをつくってるわけじゃないので、ここのテキストは「BOOK著者紹介情報」から引っ張ってます。
これは「BOOK」データベースの一部かな。「BOOK」データベースは取次2社と紀伊國屋書店、日外アソシエーツが共同で構築しているデータベースです。
(株)トーハン、日本出版販売(株)、(株)紀伊國屋書店、日外アソシエーツ(株)の4社で共同構築している本格的な図書内容情報データベースです。
で、この時点でちょっと気づきました。
というのも「まんがseek」の人物データの一部は日外アソシエーツから出版された『漫画家・アニメ作家人名事典』のデータを使っています。
このデータをアップデートする形で『漫画家人名事典』を編集したので。
おそらくはこのときに受け取ったデータにみなもと先生のも入っていたのでしょうね。
ということで「まんがseek」の出典がほぼ明らかになった一方で、「9月14日」説がちょっと不安になってきました。
「BOOK」データベースはすごくしっかりしたデータベースなんですけど、だからこそそれとはちがう情報が見つかるのはおかしいので。
ちなみにはてなキーワードのページも「9月14日」になってました。これはどこのデータを参照しているのかわかんないです。
とにもかくにも現物チェック
ということで現物チェックです。現物といっても戸籍謄本や母子手帳ではありません。ほんとはご本人に確認するのがいちばん確実なんですけどね。
とりあえず家にあるマンガを引っ張り出します。
さっきの「冗談新選組」もありますね。
巻末のプロフィールに生年月日が書いてあることがたまにあるので、かたっぱしからチェックしました。
(あるいはみなもと先生の場合、作中にご本人が登場されることが多いのでそういうシーンでセリフの中に書いてあったりするかもしれないなと予想しつつ)
すると、ありました。
なんという偶然か、「冗談新選組」の単行本巻末にありました。
もちろんこれがまちがっているということも0%ではないんですけど(ごくごくたまにあります)、現状確認してきた情報の中ではもっとも信頼性が高いだろうということで「まんがseek」のデータを修正しました。
今回はWikipediaのほうが正しかったですね。ごめんなさい。
ちなみに再開後の「まんがseek」では上に貼り付けたような情報の根拠となる画像を添付して更新するような仕組みになっています。
これは10年前にはなかったんですけど(文字だけで記録していました)、デジカメやスマホが普及したこともあり、より正確に記録していくために改善したポイントのひとつです。
こんな感じで更新履歴とともに、過去に添付したファイルもいつでも確認できます。
インターネットの情報はもっと更新・訂正しましょう
こんなふうにいろいろと調べながら、正しいデータを入れていっています。
今回はけっこうあっさりたどり着きましたが、じっさいにはもっと時間がかかることもありますし、けっきょく見つけられずに保留になったままのケースもあります。
そういえばWikipediaとデータが異なる状態のまま保留にしていたら、ご本人からツイッターでまちがってると指摘していただきました。
違う…。私の誕生日1月10日…。 https://t.co/sK6hCChyT7
— 岡田有希(ザパァbot) (@mawaru0123) 2015, 12月 15
お詫びしてデータもすぐに修正したのですが、岡田有希先生ほんとうに申し訳ありませんでした。
身内びいきではありますけど、「まんがseek」はかなり慎重にデータを登録しています。それはひとえに漫画家の先生方のご迷惑にならないように、ただただ事実情報のみをたんたんと記録するデータベースでありたいと願うからです。
確実なデータベースがあってこそ、評論活動をはじめ、さまざまな創作活動が生まれると信じています。
ブログにレビューを書く場合も、それがいつどの雑誌に掲載されたか(初出情報)とかわかったほうが時代背景をとらえやすいですよね。
さて。
じつは「まんがseek」のデータが書き換わっただけでは終わりではありません。インターネット上にはいまこの瞬間もまちがったデータが公開されているサイトがあるからです。
今回もし、Wikipediaがまちがっていたという結果だったなら自分で修正しちゃえばいいんですけど(あまりにひどいまちがいの場合は過去に何度か修正しています)、自由に編集できないサイトの場合(ほとんどがそうですけど)はけっこう困ります。
それにWikipediaは編集できても、Wikipediaをコピーしてつくったサイトについてはどうすることもできませんしね。
インターネットの情報ってほとんどのサイトにおいて更新されません。
より正確にいうならば、訂正されることが意外なくらい少ないです。まちがいが明らかになるだけでなく、歴史や科学などの分野では新しい事実が発見されることにともなって、過去の言説がまったく無意味になることもあるのに、そのままになっています。
本来、こうした誤情報はただちに訂正されるか、あるいはインターネット上から削除されるべきなのですが、放置されたままになってるんですよね。
なげいたところでどうすることもできないんだけど(Googleにがんばってもらうしかない)、せめて「まんがseek」だけはちゃんとメンテナンスしつづけようと思っています。もちろんまちがいは少ないほどいいので、訂正の機会がそもそも起きないことを目指しつつ。
そうやって正確性や信頼性の面で、参考にしてもらえるデータベースになれればいいですね。
ご想像のとおり、ほんとうに気の遠くなるような作業をやっています。
ぜひお力添えいただけるとうれしいです。年末年始にちょっとだけでもメンテナンスしてみませんか。
とくに登録しなくても自由に人物データや作品データは編集できるようになっています。
(来年早々にはアカウント登録ももっと簡単にしようと思ってます)