まんがseek運営日記

まんがseek運営者のメモというか編集後記。

まんがseek」は世界最大のマンガデータベースをみんなでつくることを目的に立ちあげられたプロジェクトです。すでに1万人をこえる漫画家、3万点をこえる作品がデータベースに登録されています。詳しい案内はこちらをご覧ください。→まんがseekについて

ゲスト編集時にDB反映結果をメールでお知らせするようにしました

「まんがseek」ではゲストの方によるデータベースの編集も日々おこなわれていて、少しずつ増えてきています。
(そのうち日毎の数字を出してみようと思います)

ぼくらとしては、とにかく個人の知識を結集することがいちばんの目的で、メンバー登録をするということがそのハードルになるのは本意ではありませんから、登録しなくても編集作業に参加できるゲストの仕組みを用意しています。

ただし無制限に編集できることのリスクはありますので、現状ゲストからの申請に対してはぼくを含む4人のコミッター(承認する役割の人)がチェックをして、オッケーだったら本番データベースに反映するようにしています。

この手順はリスク対策としては妥当だとは思う反面、せっかく自分の知識を提供したのにいつサイトの情報が更新されるかわからないのは不親切だなと感じていました。

そこで、希望者にかぎってはサイトに反映したタイミングでメールを送ってお知らせするようにしました。

すでにサイト上のゲスト用編集フォームには、以下のようなメールアドレスの入力欄が用意されています。

f:id:takeshi:20160107151654p:plainあくまでも希望者のみですので、必須ではありません。
早ければ1時間以内に、遅くとも24時間以内には結果の通知が届くはずです。

また反映されなかった場合も、その理由についてメールでお伝えするようになっていますので、次回以降の参考にしていただければと思っています。

先日のマンガの定義の話に代表されるように、「まんがseek」の運営ルールにはどうしても「ケースバイケース」なものがありますが、それも含めて可能なかぎり開示していこうとしています。
これらのルールは絶対的なものではなく、常により適切なものに変えていきたいとも思っているので、開示してリアクションをいただきながら変えていければと考えています。

あと、そう遠くないうちにメンバー登録ももっと簡単にします。
メンバーになると編集できる項目も増えますし、更新履歴に自分の名前が表示されるので、ぼくとしてはより多くの方にメンバーとして参加してほしいのですが、いまはぼくが手作業でIDを発行しているので時間がかかっています。

10年前のように1000人をこえるメンバーとまたガシガシ編集していきたいですから、その場でさくっと登録して、すぐにメンテ作業に入れるようにします。
これについてはもうちょっとだけ待っててくださいね。

もちろんいまでもメンバーは随時募集していますので、「ちょっと手伝ってみようかな」と思った方はぜひ参加していただけるとうれしいです。

まんがseek vs Wikipedia(みなもと太郎先生の生年月日を調べる)

先日「まんがseek」でも紹介したこのイベント、「風雲児たち」好きとしてはいきたいなあと思ってるんですけど、みなさんどうします?

「みなもと太郎の『風雲児たち』展」開催記念講演会@深川江戸資料館

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 特別展「みなもと太郎の『風雲児たち』~漫画でみる幕末~」開催を記念して、特別講演会を開催いたします。

 【講演内容】
 第一部 14:00~15:00
 「幕末維新期とはどのような時代か?―通説を見直す―」
 
講師/ 小泉雅弘(駒澤大学文学部教授、明治維新史学会理事)

 第二部 15:10~16:30
 「みなもと太郎風雲児たち』を語る」
 講師/ みなもと太郎(漫画家)、
    〔聞き手〕おかべたかし(「風雲児たちガイドブック解体新書」著者)

マンガも歴史も好きなので、みなもと太郎先生の「風雲児たち」は超愛読しています。外伝も同人誌で買ったりするくらい大好きです。

で、参加する前にちゃんとメンテナンスしておこうと思って「まんがseek」のみなもと先生のデータをチェックしました。

そうすると生年月日が「1947年9月14日」になっていました。そうだそうだ、これWikipediaでは「1947年3月2日」になってて、どっちかわからなかったやつでした。

じっさいデータベースのメンテ作業をしていると、Wikipediaがまちがっているケースによく遭遇します。それと「まんがseek」のデータは基本的に(100%ではありませんが)出典を記録しているので、まちがったデータが入る率はそれほど高くないんです。
Wikipediaもルールとしては出典明記なので同じようなものかなあ)

だからこういう場合もささっとWikipediaの情報に修正するのではなく、いろいろと調べてから修正したりしなかったりします。

まずはネットで検索してオリジナル(一次情報)を探す

まずふつうにGoogleで検索すると、Wikipediaをそのまま引用しているページが多いので、「1947年9月14日」説をとっているサイトがないか調べてみました。
(コピペが多いため、単純にヒットしたページ数で多数決をとれないのも注意すべきポイントですね)

するとAmazonではこっちが表示されました。

f:id:takeshi:20151228124953j:plain著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
みなもと/太郎
マンガ家。1947年9月14日生まれ。京都府出身京都市立日吉ケ丘高校美術課程卒。67年、集英社「別冊りぼん夏の号」でデビュー。68年「作画グ ループ」に入会。のちに同会が日本最大級の漫画同人になる立役者となる。70年上京し、講談社週刊少年マガジン」に『ホモホモ7』を連載開始、本格的作 家生活に突入する。以後、少年誌・少女誌・青年誌で活躍する。マンガ評論家としても著名(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

これは「冗談新選組」という傑作の商品ページです。ぼくも持ってますけどほんとおもしろいですよ。
来年の大河「真田丸」の脚本を担当される三谷幸喜さんとの対談もあるので(ちょうど大河の「新選組!」の時期だったかな)二重三重にオススメです。

冗談新選組

冗談新選組

 

Amazonの場合、自社でデータベースをつくってるわけじゃないので、ここのテキストは「BOOK著者紹介情報」から引っ張ってます。
これは「BOOK」データベースの一部かな。「BOOK」データベースは取次2社と紀伊國屋書店日外アソシエーツが共同で構築しているデータベースです。

(株)トーハン、日本出版販売(株)、(株)紀伊國屋書店日外アソシエーツ(株)の4社で共同構築している本格的な図書内容情報データベースです。

日外アソシエーツ/データベース販売

で、この時点でちょっと気づきました。

というのも「まんがseek」の人物データの一部は日外アソシエーツから出版された『漫画家・アニメ作家人名事典』のデータを使っています。

このデータをアップデートする形で『漫画家人名事典』を編集したので。

漫画家・アニメ作家人名事典

漫画家・アニメ作家人名事典

 
漫画家人名事典

漫画家人名事典

 

おそらくはこのときに受け取ったデータにみなもと先生のも入っていたのでしょうね。
ということで「まんがseek」の出典がほぼ明らかになった一方で、「9月14日」説がちょっと不安になってきました。
「BOOK」データベースはすごくしっかりしたデータベースなんですけど、だからこそそれとはちがう情報が見つかるのはおかしいので。

ちなみにはてなキーワードのページも「9月14日」になってました。これはどこのデータを参照しているのかわかんないです。

とにもかくにも現物チェック

ということで現物チェックです。現物といっても戸籍謄本や母子手帳ではありません。ほんとはご本人に確認するのがいちばん確実なんですけどね。

とりあえず家にあるマンガを引っ張り出します。

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さっきの「冗談新選組」もありますね。

巻末のプロフィールに生年月日が書いてあることがたまにあるので、かたっぱしからチェックしました。
(あるいはみなもと先生の場合、作中にご本人が登場されることが多いのでそういうシーンでセリフの中に書いてあったりするかもしれないなと予想しつつ)

すると、ありました。

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なんという偶然か、「冗談新選組」の単行本巻末にありました。

もちろんこれがまちがっているということも0%ではないんですけど(ごくごくたまにあります)、現状確認してきた情報の中ではもっとも信頼性が高いだろうということで「まんがseek」のデータを修正しました。

今回はWikipediaのほうが正しかったですね。ごめんなさい。

ちなみに再開後の「まんがseek」では上に貼り付けたような情報の根拠となる画像を添付して更新するような仕組みになっています。
これは10年前にはなかったんですけど(文字だけで記録していました)、デジカメやスマホが普及したこともあり、より正確に記録していくために改善したポイントのひとつです。

こんな感じで更新履歴とともに、過去に添付したファイルもいつでも確認できます。

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インターネットの情報はもっと更新・訂正しましょう

こんなふうにいろいろと調べながら、正しいデータを入れていっています。
今回はけっこうあっさりたどり着きましたが、じっさいにはもっと時間がかかることもありますし、けっきょく見つけられずに保留になったままのケースもあります。

そういえばWikipediaとデータが異なる状態のまま保留にしていたら、ご本人からツイッターでまちがってると指摘していただきました。

お詫びしてデータもすぐに修正したのですが、岡田有希先生ほんとうに申し訳ありませんでした。

身内びいきではありますけど、「まんがseek」はかなり慎重にデータを登録しています。それはひとえに漫画家の先生方のご迷惑にならないように、ただただ事実情報のみをたんたんと記録するデータベースでありたいと願うからです。

確実なデータベースがあってこそ、評論活動をはじめ、さまざまな創作活動が生まれると信じています。
ブログにレビューを書く場合も、それがいつどの雑誌に掲載されたか(初出情報)とかわかったほうが時代背景をとらえやすいですよね。

さて。

じつは「まんがseek」のデータが書き換わっただけでは終わりではありません。インターネット上にはいまこの瞬間もまちがったデータが公開されているサイトがあるからです。

今回もし、Wikipediaがまちがっていたという結果だったなら自分で修正しちゃえばいいんですけど(あまりにひどいまちがいの場合は過去に何度か修正しています)、自由に編集できないサイトの場合(ほとんどがそうですけど)はけっこう困ります。
それにWikipediaは編集できても、Wikipediaをコピーしてつくったサイトについてはどうすることもできませんしね。

インターネットの情報ってほとんどのサイトにおいて更新されません。
より正確にいうならば、訂正されることが意外なくらい少ないです。まちがいが明らかになるだけでなく、歴史や科学などの分野では新しい事実が発見されることにともなって、過去の言説がまったく無意味になることもあるのに、そのままになっています。

本来、こうした誤情報はただちに訂正されるか、あるいはインターネット上から削除されるべきなのですが、放置されたままになってるんですよね。
なげいたところでどうすることもできないんだけど(Googleにがんばってもらうしかない)、せめて「まんがseek」だけはちゃんとメンテナンスしつづけようと思っています。もちろんまちがいは少ないほどいいので、訂正の機会がそもそも起きないことを目指しつつ。

そうやって正確性や信頼性の面で、参考にしてもらえるデータベースになれればいいですね。

ご想像のとおり、ほんとうに気の遠くなるような作業をやっています。
ぜひお力添えいただけるとうれしいです。年末年始にちょっとだけでもメンテナンスしてみませんか。

とくに登録しなくても自由に人物データや作品データは編集できるようになっています。
(来年早々にはアカウント登録ももっと簡単にしようと思ってます)

mangaseek.net

「まんがseek」における漫画家の定義について(『鳥獣戯画』はマンガなのか)

利用者の方からこんなメールをいただきました。

漫画家の定義の記載がありません。私は北斎は漫画家に入れていますが、どこまで含んでいますか。

たしかに定義を書いてなかったですね。
(ちなみに通常はメールをいただいた場合はメールで返事していますが、今回は返信先のメールアドレスの記載がなかったのでこの場を借りて回答します)

以前、「まんがseek」における作品と商品の関係性について書きました。

ここでふれた「作品」にかかわった人を「漫画関係者」として人物データベースに登録しています。

なのでまず最初に申し上げておくのは、「まんがseek」に登録された人物データは、そのすべてが「漫画家」ではないということです。
具体的には原作者も含みますので、小説のコミカライズ作品の場合は、小説家が原作者として登録されています。また、原案や監修といったかたちでの協力者も含んでいますので、お医者さんや弁護士なども登録されています。

人間じゃないケースもあります。これも以前書いたのでリンクしておきます。

企業やプロダクションの名前がクレジットされていることもありますので、そういう場合はそのままクレジット通りの名前で登録しています。
その際、法人の場合はそれがわかるようにフラグで区別しています(表示の際もアイコンでわかるようにしています)。

マンガ作品の登録対象

データベースの登録手順としては、まず「人物」が必要なのですが(すべての作品はひとり以上の人物にぶら下がるため)、登録の判断は「作品」に依拠しています。

では登録対象となる作品の基準はどうかというと、基本的には

日本の商業出版社の媒体に掲載されたマンガ作品

ということになります。

なので現時点では同人誌は含んでいません(個人的にはいつか着手したいし網羅したいと思ってますが)。

また「その絵(と文章)がマンガかどうか」は個人によって差がありますのですが、今回ご指摘いただいたような葛飾北斎の作品(おそらく『北斎漫画』などの絵手本を想定されていると思いますが)は含んでいません。
同様に『鳥獣戯画』もマンガだという見解があることは十分承知していますが、現状「まんがseek」では扱っていません(まあ『鳥獣戯画』の場合は作者不詳なので登録できないという問題もありますけどね)。

絵物語や挿絵つき絵本など、小説とマンガの中間に位置する作品形態の判断はひじょうにむずかしいです(ライトノベルなどもそうですね)。
あるいは1コマ漫画というのはイラストとどうちがうのかというのもあって、ぼくらとしても明確な基準がないまま、ケースバイケースで判断して登録しているのが現状です。

そして発表媒体も紙だけをチェックすればいい時代ではなくなりました。
ウェブサイト上やアプリなどで発表されるケースも増えていますし、それにともなって「商業出版社」以外のマンガメディアも出てきています。
このあたりはなるだけ柔軟にとらえて、なるだけ登録していく方向で考えています(ただし誰でも自由に投稿できるサイトは対象外としています)。

終わりに

話を整理すると、「漫画家」の定義をするにはそもそも「マンガ」を定義しなければなりません(「マンガ」を描く人が「漫画家」なので)。

マンガを定義し、さらに必要に応じて(まんがseekの場合は「商業誌」の掲載を条件にするといった)追加の基準でもって登録対象は決まります。
だけどそもそも「マンガ」の定義自体がひじょうに困難で、誰もが納得する定義なんて存在しないのかもしれません。

ぼくらも定義が曖昧であること、未来において変更する可能性があることを踏まえて、日々のデータベース構築作業を進めています。

今回の説明は、あくまでも「まんがseek」のしかも「現時点」の基準でしかありませんので、その点はご了承ください。
ただ、ぼくらもより適切な基準に修正していきたいと思ってますので、「こう捉えたらどうか」とか「こういう基準のほうが明確になるんじゃないか」といったご意見はぜひお寄せいただけるとうれしいです。